第三部 整体・カイロを考える

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第1章 総論
第2章 整体を考える
第3章 カイロプラクティックを考える
第4章 法制化の問題

第1章 総論

カイロは独自の哲学を持つ

カイロの専門学校で学ばれた方と、整体学校でカイロを学ばれた方では、カイロに対する考え方や扱い方、こだわりが異なります。
整体学校で学ばれた方は、世の中に多くある療法のひとつとしてカイロを捉えますが、カイロを専門に学ばれた方にとっては、「カイロプラクティックがすべてであり、ほかの療法とは一緒にして欲しくない」という気持ちが強く働くようです。なぜなら、カイロは「イネイト・インテリジェンス(※)」という独自の哲学を持ち、サブラクセーションの概念を確立しているからです。
そして現在、カイロプラクティックの世界基準とされるものは、この概念に加え、オステオパシーや近代医学などから多くのテクニックや理論を学び、取り入れることで完成しました。

※ イネイト・インテリジェンス:とは、薬を使わずに病気に対処する手法。先天的な人体の自然回復力を利用します

整体は融通無碍。排他性はない

整体には独自の哲学はありません。もともとは、未法制の手技療法を行う者が便宜上「整体」という言葉を用いて、その存在をアピールしたものです。手の技で行う施術ならいかなるものでも整体として扱われるので、カイロ・テクニックの理論も問題なく整体に含まれます。整体の立場では、手技療法であれば何でも取り入れることが可能なため、融通無碍といえます。

※ 整体でも「自然治癒力」という言葉を用いますが、これは東洋医学の概念であり独自性はありません

整体やカイロ、その他の各種療法が開業できた理由「職業選択の自由」

政治的な圧力や諸般の事情により、整体やカイロは未だ法制化がなされていません。しかし、それらを整体やカイロを行うことは職業選択の自由により保証されています。その存在や行為は、もちろん違法ではなく、それ自体は取り締まりの対象となるものでもありません。
具体的な刑事・民事事件が発生して裁判になった場合に、実際に行った施術内容について適法行為の推定解釈が受けられないので、業務上の責任範囲が軽減されないだけです。

職業選択の自由との整合性「判例」

この裁判事例について、有名な最高裁判所の判例の主旨を紹介します。

昭和35年1月17日・昭和29年(あ)第2990号事件
「あんま師、はり師、きゅう師および柔道整復師法第12条が、何人も医業類似行為を業としてはならないと規定し、違反者を同14条が処罰するのは、人の健康に害を及ぼす虞れのある業務行為に限局するものと解しなければならない」。
この判例はその後、「人の健康に有害の恐れがなければ、公共の福祉に反しないため禁止・処罰の対象にならない」という点において、裁判所の判断の指針となっています。

職業選択の自由との整合性「判例の解釈」

上記の判例は下記のようなことを示唆しています。

  • あんまマッサ―ジ指圧師、はり師、きゅう師および柔道整復師法などは、医師法の立法趣旨とは明らかに異なる制限された内容を持つ立法であること。そのため、ほかを排除できるほど強力な既得権を与えられていない
  • 医療類似行為だとして、法律を楯に各種療法従事者の存在を一方的に排除しようとする論理や振舞いは 認められない
  • 各種療法の存在そのものが捜査機関の取り締まりの対象となるものではなく、具体的な事故が発生した場合に、その施術内容の危険性を個別に吟味して判断しなければならない

職業選択の自由との整合性「判例の影響力」

この最高裁の判例は、当時の厚生省はもちろんのこと国会・内閣の考え方や、下級裁判所が行う同種の裁判にも影響をもたらします。この判例は、普遍性と妥当性のある明白な論旨で構成されており、優れた判例だと思いました。

当時の厚生省は最高裁判所のこの判例を受け、行政上のあいまいな部分を明らかにするために、具体的な行政措置をとるべきでした。しかし、未だに各種療法について、法制化も禁止もしない状態に置いていることは、主管行政の怠慢ともいえます。
日本独自の発展を遂げてきた現在の医療業界について、利害調整が可能であると考える人は少ないでしょう。しかし、医療業界の複雑な特殊事情をあれこれと考えあぐねていては進歩できません。国民主体の新たな医療秩序を築き、誰のための医療制度にしなければならないのか、医療制度の基本コンセプトを再構築していく必要があります。国民の前に問題点を明らかにしながら、いくつものハ―ドルを乗り越える強い意思が必要です。

療法の定義と概念の統一が必要

各種療法の業界内は、よくいえば百花繚乱、悪くいえば同床異夢。あまりにも雑多で混沌とした状態にあります。整体の技法を見ても、それぞれの独自性が強く、共通項を見つけるのはとても大変です。未法制の手技療法が、便宜的理由で整体という名前でくくられてしまったからです。整体といっても、その中身がまったく違う場合があるので、今こそ概念の統一が必要だと考えます。

各種療法とは

各種療法とは、法令により医療制度として認知されていない民間療法です。人間が本来持っている「自然治癒力」を手技(素手)や小道具、電子などの物理的手段により増進させ、健康に役立てることを目的としています。これらの方法の総称を「療術」といい、主として経験による療法、慢性的な身体の悩みに対する施術や健康保持・増進を目的とした需要が多いのが特徴です。
その内容は300種以上も数えられていましたが、昭和43年の厚生省の調査では以下の5種目に分類されています。

療術とは
1)手技療術―整体など
2)電気療術―低周波、高周波、超短波など
3)光線療術―赤外線、太陽光線、水銀灯、など
4)温熱療術―温灸治療器、温湿布器、電気摩擦など
5)刺激療術―磁気・物理療法、バイブレーションなど

人間の手による治療法は「手当て」を根源とする技法です。このような治療法は世界中に数え切れないほど存在していますが、医療制度の保護を受けているものはすべて、しっかりした原理・原則・理論のある医療体系を持っています。
例外として、あんまマッサ―ジ指圧師、はり師、きゅう師の場合は、まず視覚障害者の生業の保護という目的がありました。徐々に体裁を整えるながら、現在のような専門学校教育になったものです。

各種療法は慎重な姿勢が必要

各種療法は未法制であるため、不幸にも施術中に事故が起こってしまった場合には、施術内容が妥当であったことに対し、自ら挙証・立証しなりません。証明できなければ、刑事上・民事上の責任を問われることになります。
また賠償責任に対しても、事故内容に相当する範囲の責任を負うことになります。

第2章 整体を考える

整体は伝承の技法

数々の「手当て法」は古来より伝承されてきた療法です。
旧幕藩体制下で伝承の技や秘伝の技として認められていたものは、新設の西洋医学の保護法益を意図的に強めようとしていた明治政府の方針に合わず、法制化されることなく民間に伝承される形で広まりました。整体は、この系譜の流れのなかで生まれたものです。手で行う施術のうち、法律で保護された医療類似行為の技法を含まないもの、公的な名前のない手技療法を整体といいます。

「整体」は便宜上の造語(内容はいろいろ)

整体は「手で行う施術により、身体の機能を整え健康維持、増進を図る」という概念をあらわす造語です。手で行う施術を整体として捉える以上、各整体院で施術内容が異なることもあります。

整体の概念を「検査法の有無」の観点で分類すると、下記のようになります。

A.検査法のない整体として
1)日本古来の伝承の技
2)東洋系(中国、タイ、その他)

B.検査法のある整体として
3)欧米系(カイロプラクティック・オステオパシ―などの技能や検査法の導入)

C. その他
4)本来は手技療法とはいえないが、整体という名前で呼んでいるもの

当学院の整体は、日本伝承の手技ばかりでなく、欧米、中国、その他諸外国のテクニックを融合した(1.2.3の複合)ものです。

手技テクニックの特徴は下記になります。

1)熟練の技能のみ施術を実施すること
2)即効性があること(ほかの療法と差別化され、施術内容が明白)
3)技能の修得が容易であること(理論と技能が客観的に説明可能)

第3章 カイロプラクティックを考える

カイロプラクティックには世界基準がある

カイロプラクティックには独自な体系があり、世界的規模で認知されています。西洋医学や東洋医学とは異なる、独自の療法であると定義されています。その他の日本固有の各種療法と併用したり、併記したりできるものではないことも当然といえます。
現段階において日本のカイロプラクティックは、わが国固有の社会的な事情により未法制のまま放置されていますが、いずれは法制化に向かわざるをえないものと見られています。それゆえに、自主規制や基準を設けることは必然的なプログラムとなるのです。

カイロ基準の統一化:世界基準か日本独自の制度か?

カイロの基準を統一する場合には、ふたつの選択肢があります。
世界水準を日本でも採用するか、または日本の特性に従い、正規のカイロ教育を受けていない自称カイロプラクターにも一定のプログラム教育を受けることを条件に資格を与えるかです。

世界水準を採用した場合、アメリカの教育制度をそのまま日本に導入することになるため、比較的高い水準の教育プログラムを修了しなければならなくなります。自称カイロプラクターは自然淘汰されていくことになるでしょう。世界水準に準じた再教育プログラムも実施していますが、応募資格には制限があります。
一方、一定のプログラム教育の受講と引き換えに、資格を与える場合でも合格基準は甘くはありません。対象者は2〜3万人です。

カイロ基準の統一化は簡単ではない

DC(※)を中心とするカイロ業界内では、基準の統一化におけるふたつの選択肢について意見をまとめることができませんでした。現在、各団体はそれぞれ独自の基準で活動しており、統一的な基準作成の流れの合意もできていません。

※ Docter of chiropractic。アメリカのカイロプラクティック専門大学を卒業し、各州の公認の開業資格を持つ専門医。死亡診断書を単独で書く資格があります。日本には50人前後いますが、法律制度の違いから医療資格はないものとして扱われます

和製カイロプラクティック

日本にカイロプラクティックが普及した陰には、和製カイロプラクターの存在もあります。
大正時代、D.D.パーマがアメリカに設立したカイロ学校を卒業した川口三郎は、日本にカイロプラクティックを紹介しました。以後、この学校を卒業したカイロプラクターによって講習会が開催され、日本各地に普及していきます。この流れは今日の各種学校にも引き継がれ、たくさんの和製カイロプラクターを輩出しています。

和製カイロプラクティック・その模索過程

和製カイロプラクターを養成している学校のなかには、実力と組織力を生かした独自の団体を形成することで、カイロプラクティックの資格を単独で認定しているところもあります。
ある学院では、「カイロ師免許試験制度」という独自の制度をつくり、卒業時にはこの試験を免除するなどの旨味を宣伝文句として使っていました。過去の手法や発想から脱皮できていないことはとても残念です。この学院に限らず、多くの団体が「全国」「日本」「全日本」など、大規模なイメージを与えるような名称を使用しています。旧厚生省の指導により、将来全国規模の組織にする可能性がある団体は、このような名称を使うようになったと聞いています。しかし、このことがカイロを広く誤認させる原因にもなっています。

和製カイロの自己主張

和製カイロの動きのなかには、日本の特殊事情や独自性を主張することで、正規のカイロプラクターを排除したり、和製カイロの存在自体をアピールすることが目的だと考えられるものもあります。しかし、これは個別の団体の動きにすぎません。他校や他の団体からは「エゴではないか」とか、「大きいところは単独で意図した動きができるからうらやましい」といった声もあります。
リーダーシップや全体をまとめられるような団体がなく、複数の団体が乱立しているのが現状です。

医療制度のひとつであるアメリカのカイロプラクティック

カイロプラクティック発祥の地であるアメリカの場合、いわゆる西洋医学(アロパシ―)の医師(MD:Medical Docter)のほかにもドクターと呼ばれる人たちがいます。手技療法の専門であると同時に、MDの資格も併せ持つDO(Docter of Osteopathy)や、手技療法を専門とするDC(Docter of Ciropractic)といったドクタ―です。オステオパシ―とカイロプラクティックを合わせて、マニュアル・メディスン(Manual Medicine)といい、それぞれの得意分野を生かし、健康回復に役立つ活動を行っています。
DOやDCは、それぞれに独自の医療概念を確立し、固有の検査法とこれに対応する多くの矯正テクニックを持っているのが特徴です。医療類似行為(はり・きゅう・マッサージ指圧)の手技とは質的に異なります。
このようなアメリカの医療の現状を見れば、日本の進むべき方向性や参考とすべき内容も見えてくるでしょう。

アメリカのカイロプラクティック事情

カイロが生まれたアメリカでも、法制化にいたる道のりはたいへん厳しく険しいものでした。カイロプラクティック法案が議会で最初に可決承認されたのは、1913年オクラホマ州でのこと。1922年、カリフォルニア州では有権者145万人の直接投票により、カイロの施術権を承認する州法が成立。この出来事はアメリカ50州の承認へと発展する契機にもなりました。そして1974年、ルイジアナ州でも可決され、ついにアメリカ全土での法制化を成功させます。初の可決から数えると、実に61年もの歳月を費やしたことになります。

1960年代までは、裁判闘争が頻発します。とくにアメリカ医師会は、組織の弾圧を意図的に繰り返したため、カイロプラクターは政府や医療関係者から無視され、職業として自立するには苦しい状況に立たされていました。この時代、「無免許治療罪」で裁判にかけられた彼らの多くは、軽い罰金刑を選ばず、牢獄に入ってまで闘争をつづけます。カイロプラクティックの独自性を守るための、たいへん勇気ある行動です。
その後、カイロプラクティックは市民の支持を受けていくと、次のふたつの出来事が起こります。それは同時に、カイロ法制化へとつながる決定打となったのです。

ひとつは1972年、連邦政府の老人医療保険にカイロ療法が含まれるという法案の成立。連邦政府はカイロプラクティックの調査研究を余儀なくされ、1975年には、国立保健衛生研究所主催のカイロプラクティックの初のワ−クショップが開かれています。
もうひとつは1975年に、カイロプラクティック教育審議会(CCE)が連邦政府教育局の公認を受けたことです。カイロプラクティック大学の教育レベルが決まったことで、各地のカイロプラクティック大学も、全米高等教育基準認定協議会の傘下である、地域認定協会の認定が受けられるようになりました。

また、アメリカ医師会の弾圧に終止符を打つといった決定的な判決も法制化に影響したといえるでしょう。1976年、シカゴ連邦地裁は「アメリカ医師会の不当行為は独占禁止法違反である」として有罪判決を下しました。これを不服とするアメリカ医師会は控訴しましたが敗訴に終わり、1990年には有罪が確定しています。

こうして、カイロプラクタ−は病院や医学者たちからの協力が得られるようになりました。現在、アメリカのカイロプラクティック大学は「専門大学」とされており、大学の一般教育(教養課程2年)が終了している者のみ入学資格が与えられます。約5,000時間の授業を4年間で終了するようにカリキュラムが組まれています。授業科目は医学部とほとんど変わりがありませんが、外科学や薬理学などの代わりに、カイロプラクティック診断学やカイロ実技の授業があります。なお、卒業できるのは2/3といわれ、1/3の生徒は落第しているのが現状です。実際、日本で開業しているのは50〜60名程度といわれており、日本人にとってはかなり厳しい道だと考えられます。

DC資格は、カイロプラクティック教育審議会(CCE)認定大学17校の卒業生に与えられる称号です。欧米の公認カイロプラクティック大学の卒業生にも同様にこの称号が与えられます。
カイロプラクタ−の開業資格は、CCE認定大学の卒業生なら受験できますが、合格者は医師と同様、3年ごと資格更新が必要になります。

世界カイロプラクティック連合

世界カイロプラクティック連合(World Federation of Ciropractic:以下、WFC)は、将来、世界保健機関(WHO)に加入することを前提とした正式な世界組織です。
ヨーロッパカイロプラクティック連合の呼びかけで、1987年、世界20カ国のカイロプラクティックの指導者50人がロンドンに集結。このときの「プレジデントサミット」で、カイロプラクティックの国際基準作成について満場一致で可決されたことを機に、1988年のシドニー大会で同組織が発足しました。

その後1997年には、非政府組織として公式にWHOへの加盟が認められました。WHOの世界地域区分に準拠し、「アフリカ、アジア、東地中海、ヨ-ロッパ、ラテンアメリカ、北アメリカ、太平洋」の7地域に分けられ、各地域の代表者は運営のための評議会をつくっています。

WFCの目的は下記のとおりです。
1) ほかの国際機関との情報の交流
2) 世界中のカイロプラクティック教育の向上
3) 国際的な学術大会を通じた情報交流と研究奨励
4) 世界の正しい啓蒙活動の協力

WFCは、国内の問題には特別な要請がない限り干渉しませんが、未公認地域への法的・免許資格などについては、協力を行います。
1988年、WFC決議で主張された「われわれはカイロプラクティックの発展と利益の確保のために、カイロプラクティック教育において CCE基準以下の教育は絶対に行わないようにしよう」ということ自体が、同組織の主たる目的となります。
アメリカ、オ−ストラリアを除き、加盟は1カ国1団体が条件となります。1990年時点の加盟国は36カ国。日本は団体の一本化ができず、未加盟の状態がつづいていました。とはいえ1997年に日本で開催された「WFCカイロプラクティック世界大会TOKYO」では、1,800人を超える来場者という結果があります。

会員の資格については、欧米のカイロプラクティック大学の卒業を基準にしています。日本のような例外国は、協議会で後日取り決めることとなっています。
現状としては、ACCE(オ−ストラリア地域カイロプラクティック教育審議会)の承認を必要としているので、日本の各カイロ団体は、一定条件を満たす既存の開業者を対象に、3年前よりCSCプログラム(Chiropractic Standardization Course)を実施しています。このため、このコ−スはカイロプラクティック標準化コ−スと認識されていますが、国際水準とされているDC教育とは異なります。国際基準の教育がなされていない国において、カイロプラクティック教育を一定水準にまで高めるために実施する「経過措置教育」という意味で使用されています。 

第4章 法制化の問題

各種療法の法制化に向けて

ここでは整体・カイロの法制化の見通しを考えてみたいと思います。整体・カイロに対する国家資格制度はないので、どんなに学問や技能を積んでも、これらの療法者は無資格のままです。とりあえず、ほかの適当な資格を取って形だけ整え、うやむやにしながら行うという方法もあります。しかし、このやり方は整体やカイロプラクティックの存在価値を失わせることにもなるので、得策とはいえません。法制化の道をあきらめずに活動を起こすこと、また日々真摯に技や経験を重ねることこそが、今われわれが進むべき道だといえます。

法制化の手続き(議員立法)

法制化への足がかりとして、まず国会への法律案の提出が必要となります。この案の提出者は、政府(主管省庁は厚生労働省)または政党(議員立法)です。なかでも議員立法での法制化は、かなり困難といえます。
アメリカの議員立法が90%に対し、日本の議員立法の過去の成功率は十数パ―セントしかありません。そもそも日本の議員立法は極端に少なく、煩わしい手続きも必要です。各所属政党の支持を取り付けなければならないうえに、議員立法を提出するには、与野党の意見を合意させるための運動も必要です。なおかつその前提として、医師会や柔道整復師会、また医療類似行為の各会の意見を求めたり、同意を取ることも重要になります。この道は険しすぎるといえるでしょう。

法制化の手続き(政府提出案)

議員立法以外にできるもうひとつの方法は、厚生労働省が「医療関係職種の新しい資格制度に関する法律」として国会に提出するというものです。この場合、厚生労働省で「新たな医療関係職種の資格制度の在り方に関する検討会」を実施。医療業界関係者の意見を聞き、その可否の検討となります。
そして、この検討会で法制化の基準となるのが下記の条件です。

1)医療のなかで正当性が認められ永続すること
2)法制化しないと本来の業務遂行に支障があること
3)法制化に従事業者および関連業者に合意があること

過去の検討会では、新たな職種は行政の簡素化に反するとか、新職種の乱造は医療の混乱を招くなどの反対意見がありました。また、検討会では医師などが委員の多数を占めているので、賛成意見が多いということも期待できません。この場合の成功への前提条件は、厚生労働省に強い問題解決をする意思があるかどうかです。

法制化の請願運動をするには全国的な組織が必要

法制化の請願運動をするには全国的な組織が必要です。しかし私たちの業界には、その意思をまとめ上げるような強い組織・団体が存在していません。業界を代表して厚生労働省の行政指導を受ける窓口さえありません。とくに、整体の分野は同床異夢というような状況であり、法制化のために利己心を捨て、大同団結をしようとするエネルギ―がないのです。

一方、世界水準を持っているカイロは、業界内での合意さえ得られれば一致団結できる可能性があるともいえます。とはいえ、その資格の内容を欧米のように「診断権のある資格」とするのか、「国内の医療類似行為と横並びの資格」にするのかが簡単には決められないため、団結は難しいと考えられています。もし合意がなされて「診断権のある資格」として内容の統一が図れたとしても、保険診療の適用という新たな問題が浮上します。健康保険制度問題との絡みから、医師会や柔道整復師会などからの同意が取れにくくなることは想像にたやすいでしょう。このような日本特有の事情を抱えているので、法制化への道は困難だといわれています。

参考文献 「カイロプラクティック概論1・2」日本カイロプラクティックアカデミー 「カイロプラクティック事典(改定第二版)」科学新聞社 「カイロプラクティック総覧」エンタープライズ社

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